維持管理情報庫 - 地山補強土工法 総合技術情報サイト

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特別な維持管理を必要としない地山補強土工法
地山補強土工法は、よく採用されるようになってから数十年程度と歴史が浅い工法です。このため、 地山補強土に着目した具体的な管理方法を規定している基準類は見受けられません。

本工法は機構的にプレストレスを維持する必要のあるアンカー工と異なり、地山に挿入することによって地山そのものを補強する工法であり、特別な維持管理を必要としません。通常行われている定期的な点検で十分です。点検時の着目点も、地山補強土工は地山と一体化しているため、通常の地山の点検と同等で良いのです。

 

道路ストック総点検の扱い

道路ストック総点検が実施されています。目的は第三者被害を及ぼす事象を防ぐため点検を実施するものです。国交省は点検の実施に当たって、最低限必要となる点検内容、判定方法等を提示した「道路総点検実施要領(案)」を配布して点検を主導しています。

地山補強土工は、この要領(案)の中で、道路のり面・土工構造物編に属します。その中で主な点検対象構造物として以表のように示しています。


アンカー工は特筆されていますが、地山補強土工法は特筆されておらず、「切土のり面(のり面保護工、のり面排水工等)」に入ると思われます。

点検方法の事例として以下のように記載されています。

(1)切土のり面
(点検方法)
1)一次点検
路上から目視観察により、切土のり面や付帯する道路防災施設(のり面保護工*および排水工)に生じている老朽化、劣化、変状等の位置、範囲、性状を確認し、第三者被害につながるおそれがある顕著な老朽化、劣化、変状等(ここではこれを総称して「異常」と呼ぶ)を抽出する。

* のり面保護工:「道路土工-切土工・斜面安定工指針」p192 解表8-1 に記されている工種(モルタル・コンクリート吹付工、吹付枠工、現場打ちコンクリート枠工、プレキャスト枠工、石張工、ブロック張工、コンクリート張工、柵工、じゃかご工など)であり、これらのうち不具合が生じた場合に第三者被害のおそれのあるものを点検対象とする。

2)二次点検
変状等の見られる切土のり面で、路上からの調査のみで判断が難しく、のり面上方の確認が必要な箇所については、二次点検において、小段やのり肩に登るなどして確認する。なお、道路防災施設の種別、路線・区間の状況、効率性等によっては、一次点検と二次点検をあわせて行ってもよい。(切土のり面の場合、路上からの一次点検のみで判断しにくいものについては、その場で小段やのり肩に上るなどして確認する(二次点検)方が改めて点検を行うより効率的な場合がある。)

(判定基準)
以下の変状が見られるものを異常ありとする。(図4-2)
・のり面崩壊のおそれのある箇所。
具体的には、のり面のはらみだし、傾動、段差、開口量(ずれ量)の大きなクラック、目地の大きな開き・ずれ等が見られるもの(写真4-1)
・吹付工等の構造物の一部が破損・劣化し、落下するおそれのある箇所具体的には、構造物の剥離・浮き等が見られるもの(写真4-2)

道路総点検実施要領(案) 道路のり面・土工構造物編 (参考資料) P.4-8 から引用

 

以上のように、本点検要領(案)での地山補強土工はモルタル吹付工などと同じレベルでの点検でよいとしています。

具体的な点検カルテを作ってみました。

 ▽道路ストック総点検 地山補強土工点検カルテ例