基準書大改訂-維持管理の時代へ

 これまで「維持管理の時代になる・・」と言われてきましたが、道路などでも事業として明確な方向性はありませんでした。何故か?それは「道路法」に維持管理の記載がなかったのです。それが平成25年国土強靱化政策をを受け改定されました。いよいよ事業費が維持管理に投入される時代になるのです。

改正道路法
社会資本の維持管理・更新に関し当面講ずべき措置(平成25年3月21日  国土交通省)
総点検実施要領(案)  (平成25年2月 国土交通省道路局)
この改正でのり設計に求められること

 

■改正道路法

 道路法が改正されました。これは非常に大きなことです。

○公布:平成25年6月5日

○改正の概要

1. 国土交通大臣による都道府県道・市町村道の施設等の改築・修繕の代行の対象となる施設等は、トンネル、橋その他国土交通大臣が定める施設等とする。

2. 道路の維持・修繕に関する技術的基準等を定める。

①道路構造、地域の状況等を勘案し、適切な時期に、道路の巡視を行い、清掃・除草等の道路の機能維持に必要な措置を講ずること

②道路の点検は、道路構造、地域の状況等を勘案し、適切な時期に、目視等の適切な方法により行うこと。

③点検等により道路の損傷等の異状を把握したときは、道路の効率的な維持・修繕が図られるよう、必要な措置を講ずること

④上記のほか、道路の維持・修繕に関する技術的基準等は、国土交通省令で定める。

○施行日:平成25年9月2日(月)

 法律で道路を点検し、維持・修繕しなさい となったのです。これでおおっぴらに維持管理としての予算措置が可能となったのです。

 

■社会資本の維持管理・更新に関し当面講ずべき措置(平成25年3月21日  国土交通省)

 道路法の改正と並行して、国土交通省は社会資本の維持管理に関して中期的な計画を立てました。それが「社会資本の維持管理・更新に関し当面講ずべき措置(平成25年3月21日  国土交通省)」です。その要点は以下の通りです。

Ⅲ.当面講ずべき措置

1.現場管理上の対策
  (1)総点検の実施と修繕
   非構造部材や地盤も含め、各施設の特性に応じ、築年数、社会的影響度等の観点から必要性の高い施設について、本年度及び来年度、安全性の総点検を実施する。
    ① 緊急点検等
 中央道笹子トンネル事故、上越新幹線におけるトンネルのモルタル剥落及び東北新幹線における高架橋防音壁コンクリート剥落と同種・類似の事象が発生しないよう、緊急点検及び緊急修繕を迅速に実施する。(主な対応) 平成25年3月中に点検・修繕を完了
    ② 優先施設への集中点検等
 上記①の緊急点検等に加え、社会資本の利用者や第三者の被害の回避を最優先に、劣化・損傷が著しく進行している施設等について、点検及び修繕を実施する。この際、必要に応じて点検項目、手法等を追加する。平成25年度内に点検完了※。点検を踏まえた修繕は速やかに行い、平成26年度中に完了
      ※地方公共団体等においては、H26年度以降も継続する場合もある(主な対応)平成26年度からは、新たに策定・見直しされた基準・マニュアル等を活用し、定期点検等へ移行
  (2)基準・マニュアルの策定・見直し
 これまでの知見や点検結果等を踏まえ、点検内容や頻度等に係る各種基準・マニュアルの策定や見直しを実施する。(主な対応) 原則として平成25年度中に各施設の基準等を見直し、平成26年度から新基準等で運用 
  (3)維持管理・更新に係る情報の整備
 各施設の管理者間での活用や国民への「見える化」を進め、的確な情報に基づく維持管理・更新に係るPDCAサイクルの推進を図るため、台帳整備と併せ、施設毎の現況等の情報をデータベース化し、当該情報のプラットフォームを構築する。情報の共有・活用を通じ、施設・分野横断的に、戦略的な維持管理・更新を推進する。(主な対応)平成25年度中に各施設の現況等の情報をデータベース化し、当該情報のプラットフォームを構築
  (4)新技術の開発・導入等
 現場の維持管理の効率化等を推進するため、劣化・損傷箇所の早期発見等に繋がる非破壊検査等による点検技術の開発・導入等を推進する。
 
2.現場を支える制度的な対策
  (1)地方公共団体への支援
  (2)維持管理等の担い手支援
  (3)国の一元的なマネジメント体制や法令等の整備
       
3.長寿命化計画の推進
 長寿命化計画について、総点検の結果等を踏まえた内容の充実とともに、計画の策定等を強力に推進する。


 要は平成25年度中に緊急の総点検を行い、データベース化する。同時に維持管理の基準を整備し、平成26年度からはその基準とデータベースを用い、長寿命化を考えつつ管理していく ということです。

 

■総点検実施要領(案)  (平成25年2月 国土交通省道路局)

 総点検については「総点検実施要領(案)  (平成25年2月 国土交通省道路局)」が配布されています。その概要は以下の通りです。

目的:第三者被害を及ぼす事象を防ぐ点検の実施に当たって、最低限必要となる点検内容、判定方法等を提示
対象:主として市町村
備考:主として市町村が総点検を実施する際に参考となる資料として送付


○ 法面のカルテ様式
[別紙1-国交省配布例]

 

この改正でのり設計に求められること
 今回の改正は、建設時代から維持管理の時代へのターニングポイントであるといえます。

 今後求められていくのは、

①維持管理を考慮した工法選択と維持管理計画を伴う実施設計

②維持管理用の工法の開発

③指定管理者制度実現のスキーム作り

 などが考えられます。まず出来ることは設計者が維持管理を考慮した工法選択と維持管理計画を伴う実施設計技術を磨くことと思います。

     → 維持管理を考慮した工法比較