老朽化吹付のり面補修工 |
||||||||||||||||||||||
総点検実施要領と老朽化モルタル吹付法面 |
||||||||||||||||||||||
法面保護工としてのモルタル吹付工は、高度経済成長期とともに昭和40年代に非常に多く施工された工法で、40年代後半には800万㎡/年もの施工量があったといわれています。現在は緑化可能な工法(法枠工・緑化工)に置き換わる形で施工割合が大幅に減じていますが、それでも440万㎡/年(平成13年度時点)もの施工量があります。 最盛期に施工されたモルタル吹付法面(以下吹付法面)は、現在30~40年が経過し老朽化が深刻となっており、補修・補強が必要な時期を迎えています。 一方で、2012年12月の中央自動車道笹子トンネルの天井板落下事故を契機に国土交通省では特に道路利用者及び第三者の被害を防止する観点から、全国一斉に「道路総点検」 を行う計画です。国土交通省は「総点検実施要領(案)」を作成・準備、各地方自治体に配布し、これをもとに点検や補修をすることとしています。 総点検実施要領(案)は橋梁編、トンネル編、舗装編、道路附属物(標識、照明、情報提供装置、横断歩道橋)編、法面・盛土・擁壁等(人工構造物)編の5編に分かれています。 道路総点検の法面の中で最多の構造物箇所数を有するモルタル吹付工の評価や補修工は注目です。 |
||||||||||||||||||||||
総点検実施要領(案)の点検 |
||||||||||||||||||||||
モルタル吹付工は、「総点検実施要領(案)」では「切土のり面」に分類され、以下のように記載されています。
|
||||||||||||||||||||||
吹付法面の変状パターン | ||||||||||||||||||||||
補修の提案をするためには、変状の特性をより知る必要があります。 モルタル・コンクリート吹付法面の変状パターンは、奥園らによると①地山を含む崩壊②せり出し③クラック④空洞⑤剥離⑥表層老化(ザクザク)の6パターンに分類され ます。 このうち、①、②は外部応力による構造破壊で、背面の地山崩壊と基礎部の支持力不足による変状です。③は外部応力または内部応力による変状、④は事後の浸食か施工不良、⑤⑥は施工不良による変状と考えてよい と思います。 それらの変状パターンに必要な2次調査および補修案を以下に示します。
|
||||||||||||||||||||||
モルタル吹付法面の老朽化診断 | ||||||||||||||||||||||
モルタル吹付法面の劣化を把握する調査について,各調査の概要を以下に述べます。 (1)打音調査 コンクリート構造物の表面付近のコンクリートの状態を簡易に調べる方法で,コンクリートの表面をハンマーでたたき,発生した音によって状態を把握します。コンクリートが健全な場合は高い音が,はく離や空洞などがある場合は低い音が します。従来は調査担当者個人の聴覚によって判定されてきましたが,近年では,ハンマーの打撃音を音響技術でコンピュータ処理し,数値化する手法もあります。 (2)熱赤外線調査 熱赤外線調査とは,熱赤外線映像法を用いて,コンクリートおよびモルタル吹付法面の老朽化診断を行うもので,対象物を熱赤外線映像装置で撮影することにより,表面の微小な温度差から背面の土砂化や空洞化について推定するもので す。熱赤外線映像装置は物体の可視像を画像化する通常のカメラと異なり,物体の温度を面的に画像化することができます。以下に概念図を示します。
|
||||||||||||||||||||||
補修工の選定 | ||||||||||||||||||||||
点検及び調査で異常ありの場合、現時点で最適の吹付のり面の補修対策を想定する必要があります。主に用いられる工法は,下表の通りです。
モルタル吹付を撤去する場合は基本的には新規ののり面工の設計となり、これらについてはそれぞれの専門文献を参照されたい。 |
||||||||||||||||||||||
空洞処理工と既設吹付モルタルの補強工 | ||||||||||||||||||||||
モルタル背面の空洞処理工と既設吹付モルタルの補強工(クラック補修工)はほとんどのケースで併設となります。裏込め注入工、上吹補修工、補強の鉄筋挿入工などいずれものり面足場などの仮設が必要となり、一連性を考えた対策が合理的
です。これを元に開発された工法としてはSPレッグドリル工法(国土交通省NETIS登録NO:KK-120052-A)
などがあります。
SPレッグドリル工法の施工手順を見ると、次のとおりです。
|