教科書にない設計ノウハウ(図面)

吹付枠工のすべり止めアンカーの規格について
 主アンカー、補助アンカーについては、規格が厳格に決まっているものではないですが、よく使われるものとして2つ資料があります。

○新版フリーフレーム工法
タイプ 主鉄筋 補助鉄筋
F150 D16、L=500 D10、L=300
F200 D16、L=750 D10、L=400
F300 D19、L=800 D13、L=500

○国土交通省標準設計図
F150 なし
F200 D16、L=400 D10、L=200~400
F300 D19、L=400~600 D13、L=300~500

 また計算で決めるというスタンスであるのは、「道路工事「設計施工要領(北海道開発局)」で、主アンカーはフレーム自重及び枠内客土重量のせん断で計算するとしています。
 

補強材のあるところは主アンカーがいらない?
 完成時で考えれば補強材の位置には、補強材と主アンカーがダブって配置されます。したがって「無駄ではないか」という指摘を良く受けます。

 タイムスケールを入れて考えます。ほとんどの場合、まずのり枠工を設置します。この時の主アンカー、補助アンカーの役割は、鉄筋、型枠を支えるのが補助アンカー、吹付後の枠重量を支えるのが主アンカーです。

 この後補強材が設置されます。想定された斜面のすべり土塊を支えるのが補強材の役割です。

 このようにそれぞれが全く異なった役割を持っていますので、例え設置位置が同じであっても、補強材と主アンカーはダブって配置する必要があるのです。
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プレート背面のストッパーシースはいるのか?
 これについては規定がございませんが、以下のように考えるのが合理的です。

①ストッパーシースはもともとアンカーの頭部が腐食しやすいことからアンカー製品に先ず導入されました。これは道路公団などの腐食の調査や指摘に対して、「H.2グラウンドアンカー設計・施工基準、同解説(地盤工学会)」からアンカーの二重防錆、特にプレート背面の防錆が文書化されたため、メーカは永久アンカーとしてストッパーシースなどを配置しました。

②地山補強土工も同じ地中構造物であるので、メーカは独自の考えで、同じ構造(キャップ、防錆油は必須、ストッパーシースは推奨)としました。しかし、アンカーとは構造が異なり、根拠となる指針もありませんでした。

③その後会計検査で、地山補強土工はアンカー工と抑止構造が異なり、頭部のキャップ、防錆油は不用ではないかという指摘を受けました。補強鉄筋工の場合は頭部が錆びても良いという考えです。これを受け、景観上必要という理由がある場合には頭部のキャップ、防錆油をつけても良い、それがなければ付けない、というのが現状の指導とされています。

 会計検査での指摘と現在の指導は前記③のとおりのようですが、地山補強土工をより良い工法として普及する側としての意見を述べると、初期コストと長期の維持・耐久性を含んだ評価で判断する必要性を感じます。

 頭部は錆びても良い、めっきした上に0.5mmの腐食しろも考慮されているからである、という意見は技術的には乱暴に思えます。地山補強土の補強材は引張部材であり、特に頭部や表層部は、一般のトラス構造部材(例えば鉄塔など)とことなり、地表部では湿度がこもる状態が発生しやすく、腐食の進行が進みやすい部分です。ゆえに鉄塔基礎などで見受けるように、地表から数十センチは必ずコンクリートでめっき部材を巻きたてた仕様になっているのです。頭部定着はロックボルト構造上、定着力を必要とする重要な部位であり、結局将来は錆びの促進を抑える維持処理をいつの日か実施してゆく必要にせまられます。最初から対処しておく、といった考え方も重要です。

 ストッパーシースも頭部保護のグリースの漏れを抑えると共に、座金の背面から侵入する水や空気、その他の腐食促進材を引張芯材に到達させないためには配置したほうが安心な部材です。但し、施工でしっかりと所定位置に配置しないと機能を発揮しないため、施工管理は重要です。
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円形プレートと角形プレートでは何が違うか?

 円形プレートは座金の背面空洞を発砲ウレタンで2次注入して長期にわたる座金背面からの水や空気の侵入とキャップのグリース漏れを防止しています。

 一方、前段で説明のとおり角型プレートでは、ストッパーシースを配置しない限り座金背面から侵入する水や空気は芯材に到達し、簡単に蒸発せず、背面にこもって芯材の腐食を促進します。

 発注書によっては下の写真のようにグリース入りキャップは装着しないで、背面にストッパーシースのみを配置した仕様も見受けますが、長期耐久性と維持管理について慎重な選択が必要と思います。

円形プレート 角形プレート

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