これについては規定がございませんが、以下のように考えるのが合理的です。
①ストッパーシースはもともとアンカーの頭部が腐食しやすいことからアンカー製品に先ず導入されました。これは道路公団などの腐食の調査や指摘に対して、「H.2グラウンドアンカー設計・施工基準、同解説(地盤工学会)」からアンカーの二重防錆、特にプレート背面の防錆が文書化されたため、メーカは永久アンカーとしてストッパーシースなどを配置しました。
②地山補強土工も同じ地中構造物であるので、メーカは独自の考えで、同じ構造(キャップ、防錆油は必須、ストッパーシースは推奨)としました。しかし、アンカーとは構造が異なり、根拠となる指針もありませんでした。
③その後会計検査で、地山補強土工はアンカー工と抑止構造が異なり、頭部のキャップ、防錆油は不用ではないかという指摘を受けました。補強鉄筋工の場合は頭部が錆びても良いという考えです。これを受け、景観上必要という理由がある場合には頭部のキャップ、防錆油をつけても良い、それがなければ付けない、というのが現状の指導とされています。
会計検査での指摘と現在の指導は前記③のとおりのようですが、地山補強土工をより良い工法として普及する側としての意見を述べると、初期コストと長期の維持・耐久性を含んだ評価で判断する必要性を感じます。
頭部は錆びても良い、めっきした上に0.5mmの腐食しろも考慮されているからである、という意見は技術的には乱暴に思えます。地山補強土の補強材は引張部材であり、特に頭部や表層部は、一般のトラス構造部材(例えば鉄塔など)とことなり、地表部では湿度がこもる状態が発生しやすく、腐食の進行が進みやすい部分です。ゆえに鉄塔基礎などで見受けるように、地表から数十センチは必ずコンクリートでめっき部材を巻きたてた仕様になっているのです。頭部定着はロックボルト構造上、定着力を必要とする重要な部位であり、結局将来は錆びの促進を抑える維持処理をいつの日か実施してゆく必要にせまられます。最初から対処しておく、といった考え方も重要です。
ストッパーシースも頭部保護のグリースの漏れを抑えると共に、座金の背面から侵入する水や空気、その他の腐食促進材を引張芯材に到達させないためには配置したほうが安心な部材です。但し、施工でしっかりと所定位置に配置しないと機能を発揮しないため、施工管理は重要です。
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