施工提案のポイント

 施工時には当初設計から都合よく変えたい!というのが本音です。ここでは発注者、設計者、そして施工者の三者協議の中でいかにして円満に変更していくか、そのポイント を探ります。
 
提案・説得するのは?
 視野が狭くなると主に発注者の担当、係長のみを見て「どうしたらこの担当をその気にさせるか・・・」と考えがちです。一方でその時、発注者の担当、係長は、どんなことを考えているかというと、「どうしたら課長、所長、本課をその気にさせるか・・・どうしたら会計検査を無難にやり過ごせるか・・・」ということを考えています。

 したがって我々が担当、係長に提出する提案書は、実は担当、係長が課長、所長、本課に提出する提案書なのです。我々が考えて担当、係長に提出するのではなく、担当、係長と一緒に考えて課長、所長、本課に提出するイメージを持つことが肝要です。
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設計者を立てる
 担当、係長は説得できた・・・しかし意外なところから「ちょっと待った!!!」が入ります。それは設計者です。当初設計を変更する。それは施工者にとっては、”工夫”、”改善”、”提案”と心地よい響きとなります。しかししかし設計者の切り口で見たらどうでしょうか? ”工夫=設計時には工夫が足りなかった”、”改善=当初設計には改善の余地がある”、”提案=設計者には提案がなかった”となります。これらはいずれも設計者の評価の低下につながるため、設計者はその提案の粗探しをし、当初設計の方が良いと結論付けするように考えます。

 設計者と対立した場合、彼らを論破するのは厄介です。技術的に強いということもありますが、何よりも発注者が一度受け取っていることから、必然として発注者と設計者はタッグを組む構図となるのです。こうなってしまうと提案が通るのは稀有となるばかりか、いらぬ敵を作ってしまい、その後の履行に大きく影響します。

 このようにならないためには、設計者を立てる、そんな心遣いやテクニックが必要です。

①設計時にはなかった新たな情報を得ることができたことによる提案

 設計時には無かった情報(例えばのり切して地質状況が詳細に判明した)が加わったことによって、新規提案が実現した。設計時の判断は合っていた。

②施工業者が当社になったことによる提案

 設計時にはどんな業者が施工するかわからないため一般的な設計であったが、特異技術を有する当社が受注したため、新規提案が実現した。よって設計時の処理は妥当であった。

③周辺住民など工事に着手して初めて生じた状況に対する提案

 例えば工事によって交通の流れが変わり生じた事項などに対する提案。設計当時での考慮は無理であった。

④天然災害等不測の事態に伴う提案

 天然の異常気象などによる事態に対する提案。設計時には予期不能であった。

⑤法律など事業を取り巻く周辺環境の変化に伴う提案

 法律などが変わったことによって、仮設が難しくなったとか、設計当時での対応は無理であった。

 以上のように、共通するのは”設計時の判断は合っていた”ということであり、設計作業や設計者を肯定することに意識を起きます。このことによって設計者の拒絶や抵抗は減るようになるのです。

 

「しかし」と言うな!「はい、そして」と言え!
 提案書は上手く出来ました。それを説明しなければなりません。この説明の仕方によっても提案が通るか否かが変わってきます。コミニュケーション力も提案を通すための大切な技術なのです。

 例えば、あなたが、打合せ相手と自分との相違を伝えるときに使う最も一般的な方法は、「しかし」という言葉を話の始めにつけることです。

 発注者が、「この見積もりは高すぎる」と言えぱ、あなたは、「しかし、この工事は最高の技術が必要なのですよ」と反論したくなります。事実、そうすることが多いと思います。

 ここでよく考えましょう。残念なことに相手にとっては、あなたの「しかし」という言葉を聞くと、「あなたの言っていることは、これから私が述べる理由によって間違っています」という意味にとれるのです。だから、「しかし」以下の言葉を聞くのを止めてしまうことになっても当然のことなのです。

 これに対して、もし、あなたが発する最初の言葉が「ハイ」だったら、相手はより受容的な姿勢であなたの話を聞くはずです。「ハイ」と肯定的な返事をしてから、「そして」とつなげて自分の見解を伝えていきます。あなたの顧客の高すぎる見積もりに対する不満の声を聞いたあと、あなたはこう言って自分なりの見解を述べることができるのです。

 「ハイ、あなたがおっしゃるように私どもの見積もりの値段が高いというのは全くそのとおりだと思います。そして、その高い見積もりゆえに最高の技術で信頼度が高い工事が可能となるのです。」

 また、直接的な意見の相違も包括的に組み立てることができます。「私には、なぜあなたがこの件についてそれほど強硬な態度に出られるのか、たいへんよく理解することができますし、尊重もいたします。しかしながら、それを私が置かれている立場から見るとどう映るかを言わせてください。」

 「あなたが考えていらっしゃることについては、私は100パーセント賛成いたします。でも、まだあなたがお考えになっていないことがあると思います。」という具合です。どんな言い方をしようと、大切なポイントはあなたの見解を述べるときに相手の見解に対して直接否定しにかかるのではなく、相手の見解にまず理解を示し、認めた上でそれにつけ加える形で提示していくことが大切なのです。
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