地山補強土工のトラブル例 |
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地山補強土が計算通り機能しなかったのはなぜ? | ||||
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調査、計画は一般的な方法で | ||||
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■ 極限周面摩擦抵抗値 | ||||
この値は地山補強土のグラウトと周面の地盤の間の単位面積当たりの摩擦抵抗値であるが、「切土補強土工法設計・施工要領」によれば、極限周面摩擦抵抗の地盤別の推定値は、「グラウンドアンカー設計・施工基準、同解説」を0.8倍したものとなっている。これはアンカー工の極限周面摩擦抵抗が加圧注入した場合の実績値を参考として設定されているのに対して、切土補強土工法ではほとんど無加圧注入されていることによる。 一方極限周面摩擦抵抗の安全率については、アンカー工と比較して設計荷重レベルが小さく、プレストレスとして常時緊張力が作用しないことなどを勘案して永久を2.0(アンカー工の0.8倍)、仮設を1.5(アンカー工と同じ)としている。
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鉄筋が利いていない! | ||||
「グラウトが細い・・。」掘削してみると、本来ならばφ65mmあるはずのグラウトの外形が平均でφ30mm程度しかなかったのだ。また作業員からの聞き取りでも、削孔後、ボルトの挿入時にかなり孔壁に引っかかりがあったことが判明した。 φ30mmの条件ではどのくらいの安全率になるのであろうか。至急条件を変えた安定計算で安全率を求めた。 |
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今回の原因の整理 | ||||
今回、十分に安全だと考えて計画した地山補強土の中に、結果的に法面を傾動させた不安定因子が含まれていた。それを整理すると、 ① 補強対象の地質は軟質の崩積土であった。 ② 削孔は、二重管掘りではなく、単管掘りで行った。 ③ 削孔具を引き抜き後、孔壁が押し出し、孔が変形した。 ④ 変形して小さくなった孔にグラウトし、ボルトを挿入した。 ⑤ 結果φ30mmの極細のグラウト体となり、想定した摩擦抵抗面積を確保できなかった。 ⑥ 1本当たりの耐力が減少し、法面全体の安全率が低下した。 今回の失敗はその施工を行った時に土の中がどのようになっているかの見極めが不足していたからだといえる。上記のメカニズムを考慮していたならば、φ90mm(←φ65mm)の二重管掘り(←単管掘り)で削孔するとか、また注入は加圧注入(←無加圧注入)ができる地山補強土法を持ちいるとかするべきであった。 補強土という工法の中で、盛土補強土工法は盛土材や転圧作業など、実際に目で確認しながらの施工が可能である。これに対して切土補強土工法は、削孔した孔の状態、グラウトの状態、補強材の状態が見えない工法であり、常に造成された補強鉄筋がどのような状態になっているかを考えることができる技術者の経験が大きくものをいう工法と言える。
一方で計算ソフトなどの普及で、入力さえすれば誰でもが設計計算できるベースもある。それが故に余計に現場での本質的な判断ができるための経験やノウハウが技術者には求められるのである。 |
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粘性土に対するもう一つの懸念 | ||||
地山補強土は軟弱な土を補強する工法である。その安定化の機構は、鉄筋と地山の摩擦力と鉄筋の強度のうちより弱い値を設計耐力としている。ただここで特筆すべきことは、”鉄筋と地山の摩擦力”それをグラウトと地山の間で破壊することを前提としていることである。設計に使われているτはあくまでもグラウトと地山の周面摩擦抵抗値なのです。 ここで地山補強土は軟弱な土を補強する工法であるということを意識すると、鉄筋と地山の付着切れが、グラウトと地山の間ではなく、地山の中で起こってしまうこともあるのです。無論τはこの事象も考慮して参考表などは作成されていますが、設計する側の技術者もこのことはよく考慮しておくべき話である。 |