地山補強土工法の施工

施工手順
 ここでは”施工者用”としてではなく、実際の施工を見たことがない”発注者用”、”設計者用”として一般的な手順例を紹介します。

  以下の手順で施工します。

①準備工 資材の搬入、現地の伐採、清掃、位置決め、足場工などを行います。
②削孔工 削孔角度を確認した後、削孔。削孔完了後、削孔長検尺。その後孔内の清掃を行い、グラウト注入に支障をきたさないよう、孔内に残っているスライムを除去する。
③補強材建て込み 補強材検尺後、補強材挿入。
④注入工
セメントミルク注入
加圧注入後口元処理
使用セメントは、JIS R 5210『ポルトランドセメント』に規定する普通ポルトランドセメントを標準とし、早期強度を必要とする場合には、早強ポルトランドセメントを使用する。混和剤はグラウトの諸性質を改善するとともに、グラウトの凝結及び初期硬化の早さを調節するために用いる
⑤定着工 締付トルク確認(ナット締付でトルク決定)
⑥試験工 確認試験工は施工した補強材が所定の設計引張力を満足しているかを検証するために行うもので、全本数の3%または、最低3本のいずれか多い数について実施する。
削孔方法
  現場の施工性の多くを占めるのが削孔工です。市場単価を使うか否かで積算上の工事費は大きく変わります。 「地山補強土工の積算」も参考として下さい。

○市場単価

『クレーン式ドリル』

(L=1.0~5.0mまで)

『定置式ドリル』

(L=1.0~5.0mまで)

『ロープ足場』

(L=1.0~2.0mまで)

【市場単価 現場条件Ⅰ】 【市場単価 現場条件Ⅱ】 【市場単価 現場条件Ⅲ】

 対象土質が軟弱で孔壁が崩壊する場合は市場単価は使えません。また以下の場合には市場単価は使えません。設計と施工の土質の評価の差などで現場トラブルにも発展する項目ですので、慎重に設定する必要があります。
 

 

施工機械の種類と特徴

 施工に用いる施工機械の種類と特徴は以下の通りです。

種類 特徴、適用地盤 作業範囲 削孔径(㎜)
削岩機
レッグドリル
ハンドハンマ
本工法は、仮設の場合のみに用いる。人力によって削孔するため、削孔長は3m程度まで可能である。土質は風化岩程度まで削孔可能である。なお、孔壁崩壊性地山※1に用いる場合は、通常の補強材に替えて自穿孔式の補強材が使用できる。 高さ1m、水平から下向45°程度まで 42~46

42~52※2

クローラドリル クローラ駆動の自走式で、空圧・油圧による削孔機である。機械重量が重いため通常土足場で使用される。通常の機種では削孔長は4m程度までであるが、機種により高性能のドリフタや長いガイドセルを使用することで7m程度の長尺削孔が可能である。土質は硬岩程度まで削孔可能である。なお、仮設目的として孔壁崩壊性地山※1に用いる場合は、通常の補強材に替えて自穿孔式の補強材が使用できる。 機種により高さ5mまで水平打設可能。打設角は水平~鉛直 65

42~52※2

定置式ドリル 駆動装置を有しない空圧・油圧による削孔機である。軽量であるため、単管足場上で施工可能である。通常の機種では削孔長は4m程度までであるが、機種により高性能のドリフタや長いガイドセルを使用することで7m程度の長尺削孔が可能である。土質は硬岩程度まで削孔可能である。なお、仮設目的として孔壁崩壊性地山※1に用いる場合は、通常の補強材に替えて自穿孔式の補強材が使用できる。 機種により水平打設で高さ1m程度の施工可能。打設角は水平~鉛直 65

42~52※2

クレーン式ドリル 削孔機をクレーンに吊り下げ,または直接取り付けて施工する。のり面上の足場が不用で、クレーンの吊り上げ能力に依存するが、通常高さ30m程度まで施工可能である。削孔長は5m程度までであるが、機種により高性能のドリフタや長いガイドセルを使用することで7m程度の長尺削孔が可能である。土質は硬岩程度まで削孔可能である。なお、仮設目的として孔壁崩壊性地山※1に用いる場合は、通常の補強材に替えて自穿孔式の補強材が使用できる。 クレーンにより異なるが高さ20~30m。打設角10°~60°下向きの施工が可能 65

42~52※2

ロータリーパーカッションボーリングマシン 定置式 主に7m以上の長尺削孔や永久の孔壁崩壊性地山※1の削孔に使用する。油圧ロータリーパーカッションにより全ての地盤で急速削孔が可能である。削孔機部とパワーユニット部が分離し足場の狭い箇所でも施工可能である。長尺削孔が可能で削孔高さや削孔角度が調整可能である。全ての地盤に適する。 打設角により0~1.5m前後の打設高さ。打設角は水平~鉛直まで。削孔機正面のみ削孔可能 90
クローラ式 主に7m以上の長尺削孔や永久の孔壁崩壊性地山※1の削孔に使用する。油圧ロータリーパーカッションにより全ての地盤で急速削孔が可能で、クローラより迅速な稼働・削孔位置決めができる。重量大のため土足場または仮設構台上の施工となる。長尺削孔が可能で、全ての地盤に適する。 打設角によるが高さ0~2.5m前後程度まで。角度水平から鉛直の削孔範囲。機械前面および機械側面の施工可能。 90
ロータリー式ボーリングマシン 主に7m以上の長尺削孔や永久の孔壁崩壊性地山※1の削孔に使用する。小口径から大口径まで各種あり、横方向削孔用のロングフィールドタイプもある。一般に定着式であり、単管足場上で使用する事が多い。ほとんどの地盤に適用できるが、玉石軟岩・硬岩にはやや不適である。 打設角により0~0.5m前後の打設高さ。打設角はスピンドリルタイプで360°ロングフィールドタイプで水平(機械本体に調整機構無) 90
定置式ドリル ロータリーパーカッションボーリングマシン

※1 孔壁崩壊性地山:崩壊性、レキ混じり土等の孔壁の自立が確保し難い地山を指し、削孔後に孔壁が崩壊するなどして、その後の補強材の挿入が困難となる。
※2 :自穿孔式の補強材を用いる場合

 

施工計画書(サンプル)

 本サイト施工情報庫には、各パタンの施工計画書のサンプルがありますのでご利用ください。
 

施工管理と試験

 地山補強土工法に関し、「地山補強土工法を実施する場合、試験は何をどのように行うのか?」という質問をよく聞きます。

 これは、日本道路公団「切土補強土設計・施工指針」(H14.7)の中で、試験工に関しては「本工法の試験は、施工管理要領によるものとする」となり、平成10年10月版で記載されていた試験方法に関する項目が削除されたことが影響していると思われます。

 では「施工管理要領とは?」ということになりますが、試験工に関しては、東・中・西日本高速道路㈱「土工施工管理要領」(H22.7)の「3-5 切土補強土工」に記載されており、「引抜き試験」「確認試験」は以下のようになっています。

 
○「引抜き試験」
 目的    ・・・ 地盤の極限引抜き力を調べる目的で実施工に先立ち実施
 試験本数 ・・・ 設計上の地質毎に3本を標準とする
 最大試験荷重 ・・・ 使用する鋼材の降伏荷重強度の90%以下
 計測項目    ・・・ 載荷荷重、試験時間、補強材変位、反力装置変位

○「確認試験」
 目的    ・・・ 施工された切土補強土工法が設計を満足するかどうかを確認する
 試験本数 ・・・ 任意抽出で全本数の3%かつ最低試験本数3本以上
 最大試験荷重 ・・・ 設計荷重とする。経験的手法の場合は、別
 計測項目    ・・・ 載荷荷重、試験時間、補強材変位、反力装置変位


 他にも、品質基準や頻度に関しても記載されています。発注者と協議する際の参考にしてください。