施工時の問題解決ノウハウ

 施工時にはいろいろの問題がでます。ここでは現場での解決事例を集めました。
  
補強材の打設位置を変えたら、長さが5mを超えるため基準違反でダメ!と言われた
 補強材の長さは一般的には2.0~5.0m としていますが、その根拠も基準書には書いてあります。それらによれば、「補強材の長さに上限を設ける工学的な根拠は無いとされており、現実的にはドリルタイプの削孔機で削孔可能な長さが補強材の最大長となっている。そのため削孔方法や材料の強度などを考慮すると2.0m~5.0mで考えるのが一般である。」としています。
 でもこれらが定められたのはもう15年も前の話で、最近では高性能ドリフタや長いガイドセルを使うことで7m程度の長尺削孔も可能となってきているのです。安定上問題がないのですから、施工できる場合は、5mを超える鉄筋を検討から外すことがむしろ詳細な検討をしていないと指摘を受けますよ。
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すべり面に届かない補強材があるじゃないか、どうするんだ?
 よく考えてみてください。極限平衡法による地山補強土の設計では無数の円弧滑りに対して安全に設計されています。たまたま1つの円弧に対してすべり面に届かない鉄筋があってもその円弧に対してはFs>1.2です。またその届いていない鉄筋は他の円弧では届いていて有効に働いているのです。
 安全か否かの判定は、円弧に届くかどうかではなく、安全率を確保できるか否かによるので、全ての円弧に対して安全性は確認していますので大丈夫です。
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逆巻きで設計してあるので1段1段定着してから次の施工をしろ!との指示があった
 実施工を経験した技術者であれば、いくら逆巻きといえど、地山補強土を1段1段定着しつつ施工する・・なんてのは如何に非現実的かわかります。時間がかかるだけ実質的な安全性も低下します。かといって「そんなの非常識ですよ!」だけでは発注者側としても納得できません。名目でも首を縦に振る、そんな資料も必要なのです。

●解決例1(正統派)
 上部の鉄筋を強くすると逆巻き上の安全率は上がります。全体の最終形状に問題がなければ、鉄筋長を含めて検討をやり直します。どうしてもダメな場合で吹付枠工などの表面工を独立版系の表面工に変える必要があります。

●解決例2(かわし派)
 「ブロック施工しますから・・・」という建前とします。現実施工としては注意深く監視しつつ施工し、施工してしまえば、もともと施工途中の安全性のみの話なので、最終引渡しには問題はありません。ただし逆巻きを前提とした特別積算となっている場合は、会計検査上写真などの資料は必要となります。
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地山の補強計画なのに逆巻きしろ!といわれた
 アンカー工や地山補強土工は逆巻き施工!と信じている設計者や発注者の方もおられます。これらの方は愚直とも言えるほど素直な方が多いのできちんと説明すれば理解してくれます。
 
地山補強土 掘削に伴う地山補強土(切土補強土)

現状の安全率をFs=1.0とすれば、地山補強土を付加し、Fs>1.2とするものです。どの鉄筋を打つ場合でもFsは1.0以上あります。 現状の安全率をFs=1.0とすれば、切土に伴いFs<1.0となるため、地山補強土でFs>1.2とするものです。切土によって安全率が低下するため出来る限り鉄筋を打ちながら掘削します。

 地山の補強計画の場合は、どの鉄筋を打つ場合でもFsは1.0以上あり、安全率の上昇は鉄筋を上から打っても、下から打ってもいっしょです。したがって逆巻きに意味はありません。
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市場単価の設計で、孔壁が崩壊しやすい地盤とアピールしたが、理由を示せと言われた
 まず長さなどが正規に市場単価か否かチェック(削孔方法)。市場単価の場合はいろいろな状況を説明するしかありません。いくつかご紹介します。

 ●基本的に調査ボーリングがされています。その柱状図において鉄筋の位置付近の深度の削孔状況でケーシングの有無を見てください。大概の場合ケーシングは挿入されていますので、「縦孔でも崩れるのに横孔では孔壁が維持できませんよ。市場単価方式では無理です!」とアピール。

 ●仮に補強材を挿入できたとしても孔壁が維持できないと設計の力を負担できませんし、安全率も確保できませんよ。例えばこんな現場(現場トラブル例)も報告されていますよ」とアピール。
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施工に入り設計時の展開図から形状・配置が変わったが配置方針は?と聞かれた
 設計の段階の配置計画は、実際に切っていないので、あくまでも切土前の配置方針として工事業者から鉄筋の配置を求められた時の一般的な指示です。これがないと工事がすすまないことからとりあえずの設定です。それらは絶対的な安定度からいっているわけではありません。

 一方我々が行ったのは実際に面を確認してからの変更であり、実際の土質状況を反映した配置としています。今回の場合、切ってみたら想定していたより悪かったという判断でやや多めの方向の設定にしています。
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高さ100m以上となる現場で吹付枠+地山補強土を設計されていた
 長距離・高揚程型高強度コンクリート吹付けシステム(ポンプ併用空気圧送方式)では、水平660m,直高150mまで圧送できるということです。このような特殊工法を使うしかありません。
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